*  翼をください   * ー俺様柏原の不器用Loveー

耳をふさいで、その場にしゃがみ込んだ。


「聞きたく・・・ない。・・・やめて。」


呼吸も荒くなって、ガタガタと震えがひどくなる。


おかしくなりそうだ。


「サラ・・・、サラ・・・。」


私の肩を掴み、愛しむ様に何度も何度も名前を呼ぶ。


やめて・・・その声で、私を呼ばないで・・・。



自分が自分でなくなりそうな、暗闇に一人取り残されたような、

そんな恐ろしく不安な気持ちが渦を巻きはじめた時、フワッと体が浮いた。


強い力で引っ張られて、私は暗闇から抜け出す事が出来たんだ。



見上げると、その手の先にいるのは柏原だった。


怒りに満ちあふれた、とても恐ろしい顔で父をにらんでいる。


「二度とこいつに近づくな!」


そう言って私のカバンを持つと、強い力で私の手を引き、その場を後にした。


< 217 / 281 >

この作品をシェア

pagetop