* 翼をください * ー俺様柏原の不器用Loveー
耳をふさいで、その場にしゃがみ込んだ。
「聞きたく・・・ない。・・・やめて。」
呼吸も荒くなって、ガタガタと震えがひどくなる。
おかしくなりそうだ。
「サラ・・・、サラ・・・。」
私の肩を掴み、愛しむ様に何度も何度も名前を呼ぶ。
やめて・・・その声で、私を呼ばないで・・・。
自分が自分でなくなりそうな、暗闇に一人取り残されたような、
そんな恐ろしく不安な気持ちが渦を巻きはじめた時、フワッと体が浮いた。
強い力で引っ張られて、私は暗闇から抜け出す事が出来たんだ。
見上げると、その手の先にいるのは柏原だった。
怒りに満ちあふれた、とても恐ろしい顔で父をにらんでいる。
「二度とこいつに近づくな!」
そう言って私のカバンを持つと、強い力で私の手を引き、その場を後にした。