* 翼をください * ー俺様柏原の不器用Loveー
「大丈夫だから、もう帰って。ここからは一人で帰れるから。」
心配掛けないように、震える声を必死に絞り出して、気丈に振る舞うと、
一瞬にして表情が変わり、今は不機嫌極まりない様子の柏原。
「そんなに震えて、どこが大丈夫だ!」
突然の怒鳴り声に、ビクッとする私を見て、柏原はひと言
「悪い・・・。」
そう告げると、私の前に背中を向けてしゃがみ込んだ。
これってまさか・・・。
お・ん・ぶ?
いやいや、それは無理でしょ?
ここ、東京のど真ん中ですし!
「いいよ、大丈夫だから。」
そう言って立とうとするも、まるで言う事を聞かない私の足。
今頃になって、腰が抜けちゃったみたいだ。
「立つ事も出来ないんだろ、ほら。」
いつになく優しい声で柏原が言う。
その優しい声色に、不覚にも、素直にこの状況を受け入れてしまった。