*  翼をください   * ー俺様柏原の不器用Loveー

最初の変化は、それから一週間位たった、いつもと変わりない土曜日の夜。


普段お酒なんて飲まないお父さんが、初めて酔っ払って帰り、荒れていた。


上司の起こした失敗の濡れ衣を着せられ、クビを宣告されたのだという。


会社をクビになった事よりも、一番信頼していた上司に裏切られた事が、お父さんの心に大きな傷となった。


お母さんと私は、そんなお父さんを励まし、お父さんも最初は頑張って職探しをしていたんだけど・・・。


それからしばらくして、朝からお酒を飲んで、家にこもるようになっていった。



生活費を工面するために、お母さんは昼も夜も働いて、私はお母さんがかわいそうだったのだけど、

「今、お父さんは大変な時なの。サラとお母さんで、支えてあげましょうね。」

辛いはずなのに、お母さんはいつも笑顔だった。


それから少し経つと、お父さんは元に戻るどころか、お母さんに対して、暴力を振るうようになって、

私が止めに入ると、私にも手を上げるようになっていった。



優しかったお父さん・・・。


いつか元の家族に戻れる日を願って、ひたすら暴力に耐える毎日。


そんなある日の事だった。


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