* 翼をください * ー俺様柏原の不器用Loveー
長く感じられた沈黙の後、後ろから優しく抱きしめられて、温かな温もりに包まれる。
「柏原・・・?」
少し震えている柏原の腕を握った。
「話してくれて、ありがとう。」
傷心に満ちた声。
こんな柏原の声を聞いたのは、初めてだった。
「お前はすげえな。強いよ。」
そんな事無いよ。
柏原がいてくれたから、勇気が出たんだよ。
「サラ・・・。」
初めて名前で呼ばれた事に、少し驚いていると、柏原は体を離し、私の体を自分の方に向かせる。
柏原の瞳が、少し赤くなっている事は、気付かない事にした。
それよりも、優しく微笑むその顔に、私の顔が赤く染まっていくのが分かる。
「目、つぶって。」
いつもなら、命令口調で言うだろう柏原が、優しく諭すように話すから、素直に目を閉じた。
閉じたはいいけど、今、この状況で目を閉じてしまったら、OKしちゃったって事になる?
急に不安に襲われて、閉じた瞳をさらに強く閉じた。