* 翼をください * ー俺様柏原の不器用Loveー
「お前、いびきはかくわ、寝言は言うわで、色気ゼロだったぞ。」
柏原はそう言って口角を上げ、少し目じりを下げて笑った。
心臓が、トクン・・・トクン・・・と、リズムを刻む。
何これ!?
心が暖かくなる不思議な気持ちを、必死で隠そうと、ムキになって言い返した。
「い、いびきなんて、かかないし!」
「かいてたし。それに、寝言で何回も『お父さん』って、どんだけファザコンだよ。」
「え・・・。」
「なんだよ。」
あの夢・・・。
「お父さんなんて、いないよ!」
つい声を荒げてしまって、柏原の表情が強張る。
私も、自分の声の大きさに驚いて、少し落ち着いて続けた。
「私が7歳の時に・・・
・・・死んだ。」
本当はどこかで生きているあの人を、死んだ事にするのは、私の中での暗黙のルール。
「そっか、わりぃ。」
さっきまでの空気がガラリと変わり、二人の間を沈黙が包んだ。