* 翼をください * ー俺様柏原の不器用Loveー
チンッ、とゆう軽快な音と共に、最上階の52階で
エレベーターが止まり、私たちは床に降り立った。
「いらっしゃいませ、橘様。」
白髭を伸ばした、気品ある初老の男性が綺麗にお辞儀をした。
「「こんにちは。」」
軽く挨拶を交し、男性に案内されるまま、長い廊下を歩く。
廊下の先に見える扉の他は、非常口以外見当たらなかった。
「坊ちゃま、橘様と、お連れの女性がおみえです。」
ドアをノックして、男性が部屋の中に声をかける。
「どうぞ。」
ドア越しに、くぐもった柏原の声が聞こえた。
久し振りに聞く声に、心臓が、ドクンと跳ねて、心が逸る。
いつもなら、顔を合わせればいがみ合っていたのに、
弱っている柏原に、どうやって接したらいいのか、正直分からない。
私の心配をよそに、中へ入って行く清四郎の後ろを、仕方なくついて行った。