新撰組 浅葱の衣を纏う者
零の幕 始まりの話
文久三年、江戸……



月が妖しく光る夜、ある一角の宿に三味線の音色が鳴り響いていた



「………来たか」



三味線を持つ男はそう言い、演奏を止めた



それと同時に、ガラッとその部屋の襖が開く



「また人を斬ったのか、蓉」



蓉と呼ばれ、襖を開けたその女の名は黒笹 蓉(クロザサ ヨウ)


白い中性的な美しい顔立ち
右耳の下辺りで縛った黒髪が、美しい顔を際立たせた


男の様な袴姿に黒の羽織り、それに大小の刀を差していた


しかし白い顔には返り血がつき、羽織りに隠れる袴や小袖にもそれが目立つ



「あっちから抜いてきたんです。斬られても自業自得です」



「ほんとっ、どこでこんな子に育ったんかな?」



「七割はあなたの所で育った筈ですけどね。晋作さん」



その男は高杉晋作、長州藩の脱藩者及び、奇兵隊創設者である

そして、蓉の親代わりともなっている
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