happyマジック
「ほら忍、みかん」
そう声をかけると、一瞬みかんに視線を落としたが、すぐに目を逸らしてしまった。
そして
「……みかんなんて、そんなに好きじゃねえし」
って……、
じゃあ
剥き途中の人のみかん食べないでよ。
私は忍にあげようとしたみかんを口の中に放り込んだ。
甘酸っぱい。
「紗苗」
そう呼ばれて振り向くと同時に身体が引き寄せられ、忍の中にすっぽりと収まった。
「やっぱ、こうしてんのが一番落ち着く」
甘く呟く少年の言葉が耳のすぐ横で聞こえる。
ドキドキドキドキ
悔しい。
だって私は嫌になるほどこのバカのことが好きなんだもん。
そんなことを改めて感じた、ある冬の日。
fin
幼なじみの家で
(俺がいること忘れてない?)
(……)