happyマジック
「お客様の中で体験したい人はどうぞこちらへ」
一通りショーは終わったらしく、今度は体験。
子ども達が列を成している。
やっと帰れる。
風船にへばり付いていた忍が動き始めるかと思ったが、
一向に歩きだす気配がない。
「……忍?」
不思議に思い彼を見上げる。
口を堅く閉ざし、子ども達の列と風船を交互に見ている。
……まさか。
「つくりたいの?」
「あー……まあ」
何をためらっているのか物欲しそうに風船を眺めていた。
行きたいなら行けばいいのに。
「行かないの?」
「ん゙ー」
腕を組んで考え始めた。
意味がわからない。
突然閃いたように忍が顔を上げた。
「じゃあ紗苗はあそこのベンチで座っててくんね?」
公園の隅にあるベンチを指差した。