happyマジック
「それで紗苗はあいつのお迎え?」
「うん。多分傘持ってきてないと思って」
「ふーん」
私の手に持つ傘をみて考え込む。
そして、私の差す傘と見比べると
「その傘貸して」
っと、弟の傘ではなく、差してる私の傘を指して言った。
「なんで?」
「俺がその傘差して帰るから」
ますます訳が分からない。
「紗苗はさ、俺の傘差して帰りなよ」
そう言って自分の傘を突き出す。
「自分の差せばいいじゃん」
「紗苗の差して帰りたいの」
私は裕城の意図が分からない傘を勝手に交換された。
そして嬉しそうに自分の頭の上を覆ってどんどん歩き出す。
そして、
「じゃあな。家着いたら返し行くから」
っと、それだけ言って去っていった。
振り向きざまに見せたその笑顔は、いつもと違った本当の笑顔だった。
いつも、そうやって笑えばいいのに。