happyマジック

「私ね、春が一番好き」



頬を染めた俺を知ってか知らずか、彼女は桜を見上げた。



「紅葉なのに?」



「紅葉なのに」



クスッといたずらっぽく子供のように笑う。



そんな彼女が年上なのに、何故か可愛く見えた。



「紅葉も綺麗だけど散るとちょっと悲しくない?春はさ、花びらが散っても葉っぱが生えてきてるから寂しくないでしょ」



それも、そうだ。
桜が散ってもあまり寂しいとは思わない。



「詩人ですね」



「どこが」



プッと彼女は笑う。



よく笑う人だなぁ。



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