happyマジック

「この桜の木も毎日見れなくなるなぁ」



木を見上げた彼女の瞳は寂しそうで、胸がぎゅっとした。



「紅葉は寂しくなんか無いですよ」



不思議そうに俺を見上げる姿が可愛くて、顔が緩んだ。



「桜は、散る一番最後は茶色くなって目に付かなくなるんですよ。一番綺麗な時期しか目に止まらないから寂しくない。

でも、紅葉は本当に最後の一枚まで綺麗に散る。最後の最後まで見てしまうから寂しいんですよ。だから紅葉ばっか寂しい訳じゃないですよ」



俺は見えないように隠しながら手に持ってきた紅葉の葉を紅葉さんに差し出す。



今日、ここに来る途中に拾ってきた。



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