春になるまで
「でも……びっくりだな。 あのMomoが俺のクラスの生徒なんて」

「あの……私のことみんなといっしょの扱いしてくださいね? 特別なのは嫌なので……」

私は俯きながら、声を小さくして言った。
私だって普通の高校生なんだから、出来ることなら普通に扱ってもらいたかった。

「もちろん。 理事長からもそう言われているからな。 雛森はいつもどおりしてたらいいから」

成瀬は学級日誌を片手に、ウインクをした。
最初の印象は嫌だったが、話してみると意外と優しい面があることに気がついた。
人は見た目に左右されたらダメだなって思った。

「っと。 ここが教室な。 比較的エレベータから近いし……道には迷わないように」

「……はい」

「……んじゃ、呼んだら教室に入ってきてな」

そう言って成瀬は教室に入って行った。
ボーと、廊下の窓から見える景色を眺める。
ふと……風に流れてきたのか桃色の桜の花びらが舞っているのが、視界に入ってきた。

「桜だぁ……」

うっとりとその光景を見つめていた。
まるで、遠い日の記憶を懐かしむように……私は目を奪われた。

.
< 11 / 21 >

この作品をシェア

pagetop