春になるまで
お昼休みになると、どこから来たんだと思うくらいの人が、教室に押しかけてきた。
当然、目当ては私。
口々に言う言葉はMomo。
自分を殻に閉じ込めて、瞞しに飾り立てた偽りの自分。

「ねぇねぇ、なんで芸能活動休止してるの?」

「……え?」

「それ〜! 歌も売れてドラマや映画にも出てたのに…突然いなくなるんだもん」

「みんな超心配してたんだからね? 理由くらい教えてくれない?」

「それは……」

つかれたくないとこにドカドカと入りこんでくる。
これは今まで事務所側としても隠し通してきたこと。
バレたらいけない、私の忘れたい記憶。

「何で黙ってんの?」

私が俯いていると苛立ちを感じさせる声がした。

「やっぱりさ〜“あの噂”マジなんじゃないの?」

ピクッと身体が反応するのを感じた。

「ほら……LISTのルキに…」

「あ〜盛り上がってるところなのにごめんね…」

女の子たちを分け入って遠矢が私の机の前までやってきた。

「雛森さん昼休みに嵐に呼ばれててさ…職員室行かないといけないんだ。 だから質問タイムは終わらしてくれないかな?」

「で、でも…」

「ほら早く行かないと嵐に怒られちゃうよ? 雛森さん立って」

遠矢は女子の言葉を無視すると、私の腕を掴んで廊下へと連れ出した。
その後ろから唖然とした顔で私たちを女子たちが見つめていた。

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