春になるまで
「桃? どうしたの? 今日はかなりご機嫌みたいね。ご飯も食べてたって東條が言ってたわ」

「うん……学校が、まあまあ楽しかったの」

ソファに座っていた私の隣に芹澤さんも腰掛ける。

「そうなの。お友達とかできた? 授業はわかってる?」

「女の子は……質問ばっかりしてきて大変だった。そしたら隣の席の男の子が助けてくれたの」

男の子という単語に彼女が少し反応した気がした。

「……そう。スキャンダルにならない程度にね。あーゆーの……もう嫌でしょ?」

「うん……わかってる」

私は紅茶を飲みながら、ゆっくりと目を閉じた。

「社長がね、桃の体調さえよければ……モデルから復帰してみないかって。もちろん、前みたいに歌も歌えるわ。少しずつ……戻していきましょう」

「ありがとう、芹澤さん」

私はその日、心地良く眠った。
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