春になるまで

「……ふれあい研修?」

「ああ。1年が入学したら2、3年が歓迎会をする行事があって……そのときに1曲歌ってほしいんだ」

その旨が書かれたプリントを見ながら、私は更に頭にハテナが浮かんだ。

「どういう、意味ですか?」

「理事長にも許可をもらっている。あとはお前が決めるんだ。雛森」

要約するならば、歓迎会のときに歌えばいいみたいだ。
今歌が歌えるのはすごく嬉しいことだけど、私なんかがそんな大役任されて大丈夫なのかな。

「……こんな機会が貰えるのは嬉しいんですけど、正直怖かったりします」

「どうして?」

「先生はご存知でしょ? 私が活動休止している理由を。だから、私なんかが歌ったりしていいのかなって……」

脳裏に蘇るあの日の光景。
思い出しただけで冷や汗が流れて、私に不快感を与える。

「お前は……何で歌手になろうと思ったんだ?」

「え?」

「歌が……好きだからじゃないのか? 俺がお前の歌が好きだと言ったら、すごく嬉しそうだったのに」

成瀬の言葉が胸に突き刺さった気がした。
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