春になるまで
そうだ……。
私が歌手になろうと思ったのは純粋に歌が好きだったから。
歌うことが大好きで、それを通じてたくさんのことを伝えたかったから。

「歌が好きなお前がこんな機会を貰えるのに、何で躊躇うんだ?」

「……」

「やりたいならやればいい。周りを気にするな。うじうじ考えるのはお前に似合わない」

「……よくもまあ、そうズバズバと言えますね。私そんなに言われたの初めてなんですけど」

「気を遣えないんでね。上辺だけの言葉よりはマシだろ?」

「確かに……少し勇気が沸きました。その話……受けさせてください」

私は顔をあげ、真っすぐ成瀬の顔を見つめた。
私の顔を見て、成瀬は少し笑うと応接室から出て行った。
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