春になるまで
一人さっきのことを考えながら廊下を歩く。
あれから……結構人前では歌っていない。
1、2年は経つかもしれない。
あのホテルに入れられてから、外の状況を把握しきれてなかった。
テレビも特別見るわけでもなく、ずーっとベッドルームに篭りっきりだった。
人と接するのが怖くて、自ら殻に閉じこもって……

でも今はどうだろうか。
あの空白の2年間に比べたら、毎日が充実しているように感じる。
結局私は逃げていただけなんだ。
今なら思う。
あのとき、私に立ち向かえる力があったなら、今はすごく変わっていただろうって。

「歓迎会なんだから、アップテンポがいいよね……だとすると、Mariaか蒼の空がいいかな」

期待に胸を膨らませ、私は笑顔で教室に戻った。
< 20 / 21 >

この作品をシェア

pagetop