春になるまで
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「……私は知らない!!」

「桃……落ち着きなさい!! まだ私たちも信じてるわけじゃないのよ?」

「違う違う!! 私こんなことしてない!!」

そう叫んだあと、頭の中がボーとして……急な眩暈に襲われた。
芹澤さんが叫ぶ声が聞こえた気がしたが、私はそのまま意識を手放した。

「……精神的なものですね」

「仕事は休んだほうがよろしいかと」

「私なら大丈夫だから」

「また発作が起きたら……」

「桃のためなのよ?」

「歌がないと私は生きていけないの……」

「ひとまず様子を見ることにしましょうか」

「ここでゆっくりしていていいからね」

「やだ、やだ!!!!」

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「……さま、桃さま」

「……ぇ?」

「酷くうなされてましたけど……ご気分は大丈夫ですか?」

頬を触ると……涙で濡れた後があった。
また……あの夢か……。
思い出したくもない記憶。
私の人生を狂わせた忌まわしい事件。

「……だ、いじょうぶ」

東條は酷く私を心配してたけど、時間の関係なのか学校に着いたと伝えると、職員室の場所を教えて事務所に帰って行った。
帰り頃に迎えに来ますと、そう伝えて。
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