春になるまで
「いろいろと大変だったようで……でも安心なさって。 我が校にいるかぎり、そのような不快な思いは絶対にさせませんわ。 だから有意義な学校生活をお送りになって」

少し目を伏せて、それでも凛とした声で理事長は私を安心させるように言った。
その気遣いが嬉しくて、私は思わず涙を流しそうになった。

「辛かったわね……ストレスもあるでしょう? ここには自然もあるし、あなたにプラスのことをもたらしてくださるはずですわ。だからよい時間をお過しになって」

理事長は私の手を取って優しく包んでくれた。
暖かい……。
何年ぶりに人のぬくもりを感じただろうか。

「……あ、ありがと……ございます……」

泣きそうになるのを堪えながら、途切れ途切れに私は言葉を紡いだ。

「ほら……いい顔が台なしよ? HRがはじまる前に顔をなおしてきなさいな」

理事長は私を洗面室に入れると、静かにドアを閉めた。
私はその場に座り込むと、声を殺して泣いた。

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