夢見る君を
「ユ~イカちゃん。」
4月某日。まだ大学生活は幕を開けたばかり。
桜の舞う通学路を帰宅途中に、知らない声で名前を呼ばれた。
驚いた私は、目を丸くして声の主を見る。
「アドレス教えてくれな~い?」
そいつは、そこだけが金髪の長い前髪を真っ直ぐに垂らし、細長い体に重そうなアクセサリーをいくつもつけて、気だるそうに立って言った。
誰?こいつ。
大学一緒?
よく見ると割とイケメンなそいつは、いかにもチャラそうな髪型と服装で携帯をパカパカさせている。
「あの~…どちら様でしたっけ。」
「え?知らないの?俺だよ!俺。」
「新種のオレオレ詐欺ですか?」
「…ぶはっ!…ちがっ(笑)」
笑ったそいつの顔は似合わないくらいかわいくって、ちょっとだけドキッとした。