この手で紡ぐ神の欠片



「我々に知らないことなどあるまいよ」

余裕たっぷりにムーニンが言い切った。

「なら――」

そう、私が言おうとした時に
足音が聞こえた気がして、
私は言葉を飲み込んで、
屋上の入り口の扉を見た。

茶色い髪が音もなく風に遊ばれる。

「――やぁ!」

楽しそうな少年の低い声と同時に
その扉が開かれた。

「な、んだ」

あんたを見たら
涙が出そうになるよ。

「詠人――」

彼は眼鏡の奥の瞳を
柔らかく細めて、笑顔を作った。



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