この手で紡ぐ神の欠片



「暇だよ、うん夜もね。あ、けど父親が――」

「良い」

彼の言葉を、強く遮る。

「むしろ居た方が良いかもしれない」

そう言った私の表情が、
強張っていて
詠人が、どうした、と覗き込んできた。

「…なんでもない。じゃあ、日曜日に」

少し素っ気無く私は言った。

こんな失礼な態度に、
我ながら溜め息が出そうだった。


「ねぇ珠輝」

詠人が手にとめていたムーニンを放した。

そのままそのカラスは、
冷たい風が吹く冬の空へ消えていった。

「泣きそうなのに、強がらないでよ」

その優しい声に、
くしゃりと私は顔を歪めた。



< 212 / 268 >

この作品をシェア

pagetop