この手で紡ぐ神の欠片



私は赤い十字架が隠れるよう、
ネクタイもきちんと締めた。

雪が、ふわふわと舞い落ちて消える。

「――珠輝」

詠人は先程の服装にプラスで
制服のダークブルーのブレザーを羽織っていた。

「えっ!?」

そして片手で、
私のマフラーを持っていた。

「…詠人…?」

「寒いと思って!」

私の目の前にきた詠人は、
はい、と言って
私にマフラーを巻いた。

確かに温かい。

詠人が優しく笑っていた。

「……さっきのロマンスどこいった…?」

私は本当に小さな声で呟いた。

「ん?」

詠人が私の顔を覗き込んだ。

「…なんでもないよ――」

私は目を細めた。

「雪、今年初だね」

詠人は空を見上げて、
髪をかき上げながらそう言った。



< 249 / 268 >

この作品をシェア

pagetop