この手で紡ぐ神の欠片
「消えるんだよ。きっと」
私は肩を竦めた。
目の前を青い火の粉が待った。
見えないけれど、
髪にも火は飛んでいるだろう。
詠人は下唇を噛んで、
私を抱き締めた。
私は抱き返すことができなかった。
「…珠輝、僕の使う神話でね」
詠人が耳元で囁いた。
ゴミ溜めの公園に降る雪の中。
「雨が、降るんだ」
私は消えそうな彼の声を聞く。
「世界を洗い流すための大洪水」
「あ、知ってる。ノアのハコブネの話」
私が言うと、詠人が頷いた。
「そう。ねぇ、珠輝の炎も――消える、かな」
詠人の体が、震えているように感じた。
「…洗い流せるかもね、全部」
皮肉っぽく私は言った。
腰辺りまで、炎が包んでいた。