Anniversary
 私が先輩に“告白”をして、付き合うことになったのが……1年前の春。先輩の〈卒業式〉の日から。

 そして、私が晴れて先輩の“カノジョ”になれたのは……ついこの間。私の〈卒業式〉の日。


 それまでは、…多分“付き合って”はいたのだろうけれど、――でも私はまだ“カノジョ”では無くて。

 先輩と会っていても、こうして思いっきり抱き付いたりすることとか出来なくて……抱き付こうと思えばいつでも抱き付けるトコロには居たのだろうけれど、先輩が私のことをどう思ってくれているのか、それがわからなかったから……きっと“引け目”みたいなものを、自分なりに感じていたんじゃないかと思う。

 にこにこと当たり前のように私を一緒に居させてくれる、そんな先輩の優しさに甘えながら……でも、どこかでエンリョしてる自分が居て。甘えきれないでいる自分が在って。

 私が一方的に先輩を“好き”なのだと思ってた。ずっとずっと、そう思ってきた。

 そのことが、すごくすごく、哀しかった。やりきれなかった。

 でも、やっとやっと、1年も経ってから、先輩も私のことを“好き”だって――ものっすごくヒネクレた解り辛い“告白”だったけどっ…!――言ってくれたから……それでようやく、ああ私はこれからも先輩のことを好きでいていいんだなあ…って、実感できて。自分がずっと感じてきた“引け目”みたいなものが、すうっと融けてくみたいに失(な)くなっていくのが解って。

 だから、こんな風にして、誰に憚(はばか)ること無く思いっきり抱き付いたり出来ることが、今はただ、素直に純粋に嬉しい。
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