Anniversary
そんなようなコトもあり……三樹本や武田と同様、坂本にとっても“カノジョ”の写真が絡むワケだからな。
2人の企みに乗じて、ついでに写真部へ梨田サンの写真についても圧力をかけられれば、それに越したことは無かったワケだ。
しかし写真部にとってそれは、『会長と小泉サンと高階サンの写真まで押さえられて、このうえ梨田サンの写真まで取り上げられたら……!! マジでこのさき立ち行けませんっっ!!』って泣くのも尤もである、充分な死活問題へと発展する。
それもこれも、どこまでも“カノジョの写真を他の男どもの手に渡してたまるか!”っつー、恋する男どもの単なる見境の無いワガママの所為、って……それもどうだよ?
「そんなワケだから……」
相変わらず目を瞠って赤面して硬直し、おまけに絶句までして立ち尽くす、梨田サンを見下ろしながら。
ニッコリ笑って、俺は言う。
「こぉんな写真をバラ撒かれたくなかったら……今回のところは、見逃してくれない?」
「――そっ…そんな脅しに、私が、屈するとでもっっ……!!」
俺の言葉が終わるのを待たず、相変わらず赤面したままとはいえ、キッとした視線と共に被せられてきた返答は。
――やはりサスガというべきか。その鋼鉄の意志。
このまま言わせておいたら、ヤケクソな勢いに任せて「好きにすればいいでしょうっ!」とでも言い出されかねない。
…それでは困る。
「ああそう? じゃあ、それでもいいよ」
相変わらずニコニコと微笑んでみせながら、そんな言葉をサクッと差し込んで、ここで彼女を止めておく。
「コッチだって、こんな写真ごときで説得できるとはハナから考えちゃいなかったし」
あまりにもアッサリと肯かれて少しは戸惑いなど覚えたのだろう、やや困ったような表情を浮かべるとクッと出しかけた言葉を飲み込み口を噤んだ、梨田女史。