Anniversary

「梨田サンが思ったよーに、天文部ごと処分でも何でもすればいいさ。――でも、その時は……」

 対して、それでもなお相変わらずの調子で続けられる、俺の言葉。

 しかも表情には、更に強力になったニッコリ笑顔までもを貼り付けて……そのままで軽く告げてやる。


「これから先ずっと、シツコイまでに俺から『タマちゃん』って呼ばれ続けることは……覚悟しとけよ?」


「…………っっ!!?」


 ―――校内において向かうところ敵無し、泣く子も黙る最強の生徒会役員、会計の梨田女史。

 こと、梨田 環(たまき)。

 何を隠そう、これこそが彼女に対して最も有効であるだろう“弱点”である。

『たまき』という名前で、昔からサンザンからかわれてきたらしい。

 だから彼女は、今でも頑ななまでに名前で呼ばれることをイヤがる。

 …一種のトラウマだよな、これはもう。

 …てなコトを当然、一応“モトカレ”である俺も、知っているようなワケであり。

 そして同時に……俺が“言ったからには必ず実行する”ような男であることを、仮にも“モトカノ”であった彼女も当然、知っているワケなのである。


「それでもいいなら……処分でも廃部でも何でも、好きにすれば? ターマーちゃーん?」

「ひ…卑怯です、そんなっっ……!!」

「いーや、俺はあくまでもフェミニストだからな。間違っても『たまたま~』とか『たまき~ん』とか、呼んでやらないから安心しろ?」

「――って、呼んでるし既にっ……!!」

「ま、俺が呼ばなくても。俺が『タマちゃん』って言ってる限り、そう呼ぶヤツなんて、放っといたって自然に出てくるってなモンだろうしー?」

「…………!!」

「それがどうなるのかは……ココでのアナタの決断次第、ってね!」

「…………」
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