Anniversary
そうして彼女がギリギリと俺を睨み付けたまま絶句すること、――約1分。
1つ、深々としたタメ息を吐いてから……聞こえないくらいの小さな声でフテくされたような「わかりました」が返ってくる。
思いっきり“不本意!”って書いてある表情と共に。
――普段のクールなカオのウラに、こういうナニゲに可愛いトコロがあるから……だから憎めないんだよなー梨田さんって。
「はい、よくできました」と、言いながら俺はポンッと彼女のアタマを軽く叩き、例の写真部から押収してきた彼女の“恥ずかしい写真”とネガの束を、謹んで進呈してやった。
とてもじゃないけど流通できない、マジ“盗撮”に近いものまであったからな。
これは本人に返しておくのが一番いいだろう。
「ご褒美にコレやるから、その代わり梨田は、いま聞いたこと全部忘れること。…ついでに、写真の検閲は甘くみてやってな?」
不承不承ながら彼女が首を縦に振り、――とりあえずココで、この件は一件落着。
…とはいえ。
まだ片付いてないモンダイは、ここにクサるほど転がっている。
「…つーワケで、キサマら? ――ここまで俺の手を煩わせやがったオトシマエ、キッチリ払う覚悟はあるんだろうなあ……?」
キロリと俺がその場を睨み付けた途端。
やっぱり再び硬直した、その場の空気。
だが、そんなもんを斟酌してあげられるホド、俺は寛大でも何でもない。
「こんなくだらんことに俺まで巻き込みやがったペナルティは、キッチリ受けてもらうからな!」
…そのために、わざわざ由良までも買い出しに出したのである。
ニヤリとした笑みを浮かべその場にいる全員を見渡し、俺は告げた。
「とりあえず……もうそろそろ帰ってくる頃だし、買い出し部隊が購入してきた飲み物と食い物類の支払いでも、まずは頼んでおこうかなあっ?」