Anniversary
「―――よぉーしッ……!!」


 先輩の姿が角を曲がって見えなくなるまで、その場から見送ると……勢い込んでそう呟いてから、私はそのまま足取りも軽く、家の中に駆け込んだ。

「張り切って作るゾ、“てるてる坊主”ーッッ!!」

 とりあえず向こう1週間分くらいは気合入れて作ってやるわよ!

 明日が“晴れ”になる要素は、ほんの少しでも多い方がいいものっ♪

 ぶっちゃけ、あんな自信満々に言っちゃったけど私ってば、そこまで超強力な“晴れ女”なんかじゃないんだもん実は。

 先輩の分と私の分、心を込めて2人分ちゃんと作ってあげるから。

「…だから私の代わりに頑張ってよね、“てるてる坊主”っ!!」

 短い花の命が咲き誇っている間は……どうかお願い“てるてる坊主”。

 出来る限り毎日、先輩と一緒に居させてね。


 ―――この“お花見日和”が、ずぅーっと続いてくれますように……。







 そして私が、“てるてる坊主”のために時間を費やし過ぎたあまり、カンジンなスカート丈を直し忘れたのは……、―――言うまでも無い。





―『桃の花に寄せて…。』 fin.―
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