Anniversary

「新入部員歓迎合宿ぅー?」

 言って私は、椅子に座っていた体勢のまま、思わず目の前に立つ友人を見上げていた。

 その友人――私の中学時代からの親友である高階(たかしな)実果子(みかこ)は、「うん、そう」とアッサリ1つ頷くと、手に持っていた1枚の紙を差し出す。

「これ、回覧。――5月のGW(ゴールデンウィーク)中に1泊で学校合宿だって」

 その差し出された“回覧”と赤字で書かれているプリントを見ると、…確かにその通りのことが記載されている。

 加えて、『新入部員は強制参加!』とまで太字でデカデカと。

「ちょっと待ってよ……」

 思わずゲンナリした声で返してしまった。

「だって、“新入部員”っていっても……実質、私たち2人しか居ないじゃないの今のとこ」

 ――そうなのだ。…プラス、部内の〈紅“2”点〉だったりも、する。

 ゲンナリついでに机の上で頬杖つきつきボヤいてみると……そこでミカコが「いや、3人よ」と、即座に訂正して下さった。

「ウチのクラスの早乙女(さおとめ)くんが入部してくれたので、一応、新入部員は“実質3人”になりました」

(それにしたって……回覧するまでも無い人数じゃん……)

「あと、何人か“名前だけ借りてます部員”も居るらしいし……“新入部員”と名の付く部員は、今のとこ5人くらいは居るんじゃない?」

「そういう“名前だけ借りてます部員”みたいなヒトが、仮にも“合宿”と名の付く部活動に、――参加すると思う?」

「―――…思わないけど」

「イミ無いじゃん……」

 ミカコの引きつったような苦笑に、そこで思わず、私の口から深々としたタメ息が洩れた。
< 34 / 237 >

この作品をシェア

pagetop