Anniversary
「わーってるって! 桃花チャンがオコチャマなのは、オレかて充分に理解してるつもりやでー?」

「…………!!」

 相変わらず子供扱いしてぇ…! とは、即座に思ったものの。――コレに関してはあまりにも“その通り!”なので……何も、言えないし……。

(く…悔しいッ……!!)

 途端、ジワリと目に涙が滲んだ。

 だってこの1年間ずっと、もっと先輩に近付けるように…先輩に釣り合う女の子になれるようにって、自分なりにすっごく頑張ってきたつもりなのに……!!

 それなのに、私は所詮、先輩にとっては“単なる後輩”で、“オコチャマ”でしかないんだと思うと……悔しいどころじゃないじゃない……!!

 それ通り越してむしろ哀しいわよ!! 哀し過ぎるわよ!!

 なんで私は、先輩にとって後輩なんだろう? なんで子供でしかないんだろう?

 せっかくの晴れ舞台――〈卒業式〉だっていうのに……! 晴れて、先輩と同じ“高校生”になれる、っていう、今日は記念の日なのに……!

(こんなことなら、今日、会うんじゃなかったよ……!!)

 だって、“今日”は私の……―――!


「ヒドいよ先輩……!! 今日は私の“お祝い”に来てくれるって、言ったクセに……!!」


 思わず涙声で言い、俯(うつむ)いてしまった私の頬に……「ばぁか」と、そこで優しく、先輩の大きな手が触れた。

「〈卒業式〉だから……今日、ひとつオトナになるんやろ?」

「え……?」

「だから“お祝い”や」

 反射的に先輩を見上げてしまった私の目の前には、思いのほか間近に、先輩の優しくてキレイな笑顔が、あって……、


 ―――そして唇に降ってきた……やわらかな、ぬくもり………。
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