Anniversary





「―――あ、センパーイ!!」

 ちょうど地学室から出てきたばかりのみっきー先輩を見つけて声をかけると、そこで彼は、呼んだ私の方を振り返った。

「ああ、桃花。おはよーさん」

 駆け寄ったそのままの勢いで、寝起きからサワヤカ笑顔の先輩の胸に飛び付くと、「いま起きたの?」と、私は笑う。

「私たち、…ミカコとセンセイと、もうゴハン済ませちゃったよー?」

「ああ、それはかまへん。ほかの連中は放っといてかまわんて。夜遅くまで騒いでたから、まだツブれてるし」

「――『だろうから放っておけ』って……センセが言ってた……」

「――サスガやな碓氷サン……」

 先輩のカラダ越しに、薄く開いている扉から地学室を覗き込んでみると……その言葉の通り、ツブれてる屍が、多量のビール缶と共に、累々と転がって横たわっている。

「オレは、この“後始末”してかなアカンし……桃花は、ミカコちゃんと先に帰ってていいんやで? もともと、朝メシ食べたら現地解散の予定やったしな」

 その言葉で、思わず「なーんだ…」とボヤいてしまった。

「せっかくのいい天気だし、これからミカコとアイスでも食べに行こうって話してて……それで先輩も誘いに来たんだけど……」

「悪い、また今度な?」

「あんな連中、放っておいたら? 後始末くらい、当人たちに任せとけばいいじゃない」

「…《天文部》が廃部の危機に陥ってもいいんデスか?」

「…よくないデス」

 先輩は、そして私の頭をくしゃくしゃっと撫でると、「そーゆうコトやから」と、困ったように笑う。

「あとでアイスでも差し入れに来てくれや」

「うん、そうするね」

 そして押し出されるようにして踵(きびす)を返しかけたのだったが……「あ、そうだ!」と、そこで思い出して振り返る。

「ごめんね先輩! 昨夜はお手数おかけしました!」

 そこでペコリと一礼、深々と。

 ――そうよ、そもそも謝りに来たんじゃない、私……!!
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