Anniversary

「ごめんなさい、私が1人で先に眠りこけちゃって……てゆーか、あのまま放っておいてくれても別によかったのに……」

「イヤ、幾ら何でも、あんな寒空に放置しとけんって」

「でも先輩とくっついてたから、あったかかったし。そのままずーっと一晩、一緒に寝てても良かったくらいだよー」

 そこでテヘッと照れ笑ってみせた私に対し……なのに先輩は、あからさまにヒクッと引きつったカオをしてみせてくれた。

 ――何ですかその反応は……。

「桃花……たのむから、くれぐれも誤解を招くよーな言い方は……」

「――はい…?」

「イヤ、もう、いいわ……。――ホラ、早く行かんと、実果子ちゃんが待ちくたびれとるで?」

「え…あ、ハイ……じゃあ、行ってきます……」

「ハイ、行ってらっさい」

 そこまで満面笑顔で手を振って追い立てるよーにしてくれなくても……とは、思ったものの……。

 とりあえず、つられたように手を振って、私も笑顔で今度こそ踵を返す。

 返しついでに、ニッコリと無邪気に、去り際にこんな言葉を投げてみたり。

「じゃあね、先輩! また2人で星見に行こうね~っ♪」

「…………」


 ―――そして、ルンルン気分の私が小走りで廊下の角を曲がった途端……、


「ごごご誤解やーっ!! だから、誓ってオレは何にもしてへんてっ……!!」


 先輩のそんな絶叫…らしきモノが、遠くで聞こえたような気がしたけど……、

 ――とりあえず、この場は聞こえなかったことにしておこうっと………。
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