Anniversary

 その端正な顔立ちに思わずボーッと見惚れて……つい、まじまじと凝視してしまった。

 こんな男の子が同じ学校にいたら、絶対、女の子が放っておかないハズ。

 ―――誰なんだろう……?

 見つめるだけで何も言わない私の視線に耐えかねたのか……困ったように微笑んで、そして彼は再び訊いた。

「――ココでええんやろ? 理科室って」

 その言葉にハッとして我に返ると、ようやくコクコクと頷きながら、「ハイ、そうです」と、私も返す。

「…ほな、ちょっと入らせてもらうわ」

 彼は小さくホッとしたように笑って言うと、ようやく扉をくぐって室内に足を踏み入れた。

「ココで待ってるように言われてるんよ」

(―――『待ってるように言われて』……? 誰に……?)

「あ、あの……?」

 不思議に思って、私が何事か問いかけようと口を開きかけた、―――そんな時。

 戸口にヌッと覗いた、大きな影。


「待たせたなあ、三樹本(みきもと)」


「―――先生っ!?」


 思わず叫んでしまったのは、私の方だった。

 その声で、室内にいた私の存在に今はじめて気付いたかのように……その大きな影――《天文部》顧問である理科担当の柳井(やない)先生が、驚いたような表情でコチラを見やる。

「おお、居たのか小泉(こいずみ)。おまえが今日の当番だったか? ご苦労さん」

「イヤあの、『ご苦労さん』って、センセイ……!」

 この彼が『待ってるように言われ』たのは、どうやらウチの顧問の先生に、らしい。

 ―――てことは、…つまり何?

 先生と、この彼と、…2人を繋ぐ関係がサッパリ全く読み取れない。
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