Anniversary
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「―――おーっと、桃花! コレはオレが持ってっちゃる!」
突然、頭の上から降ってきたその言葉と共に、私が今しも抱え上げようとしていた天体望遠鏡を、後ろからヒョイッと、みっきー先輩が取り上げた。
「え…? あ…ありがと……」
突然のことで驚きながらも、見上げてお礼を言いかけた私を見下ろし……先輩は、顔満面にニヤーッとしたイタズラっぽい笑みを浮かべて、言って下さる。
「桃花に天体望遠鏡を持たせたら、どうなるかわかったもんやないからなーっ」
「…………!!」
―――それは言わずもがな……中学時代の“あの出来事”を、からかって下さっているに違いなく………。
「もうっ…!! そんな昔のことなんて持ち出さないでよ今サラっ……!!」
それは言わないお約束ー!! と、即座に脹れっツラになって私は、先輩を上目遣いで睨み付けた。
しかし、そんな私の様子などドコ吹く風、あははーっと軽く声を上げて笑いながら先輩は、尚も続けて下さる。
ホント心の底からおかしそうな様子でシミジミと。
…でも、どことなく懐かしそうな表情も浮かべて。
「あん時の柳井サンの慌てっぷりといったら、もう……!! いつ思い返しても笑えるわー。ホンマ笑いごとやあらへんけど……それから卒業するまで、ずっと部内で“対天体望遠鏡接触禁止令”とか出されてたもんなあ、桃花限定で。よっぽどショックやったんやなぁー」
「…………」