Anniversary

「―――もう……ホントいい加減、忘れてくれたっていいじゃないのよそんなことー……」

 その数々を思い出してゲンナリと呟いてしまった私に向かい、「それはムリやなぁ」と、ニベも無くアッサリさっくり仰って下さる、みっきー先輩。

 ――スイマセン……もう私、フテクサレてイジけてやるせなく1人の世界に閉じこもってみても、いいですか……?

「つーか、忘れられるハズなんて無いやんか。あんなにインパクトのある“出逢い”なんて」

 しかし、そんな私のブスくれてムクれて脹れた顔を、覗き込むように近くから見つめて……ふいに先輩はニッコリと微笑む。それはそれは極上の笑みで。

 初めて出会った日から変わらない……どことなく幼くも見える、私の大好きな、先輩の、それはそれは優しい笑顔……―――。


「オレと桃花が、初めて出逢った日、だったのに……それを桃花は、忘れてもいいんか……?」


 即座に私が「イヤ!」と返すよりも早く、―――降ってきた柔らかな唇(キス)。


「…だから結局、つまるところ、桃花には望遠鏡を運ばせるワケにはイカン、っつーワケやな」


 唇が離れてから、ニッコリとそれを言った先輩を見上げつつ……思わず大きくタメ息を吐いてしまった。深々と。

 ――自分じゃ見えないけれど……多分、“これでもか!”ってくらいにイヤそーなカオをしてるんだろうな、今の私……。

 私と先輩の、“初めての出逢い”なんていう大切な思い出の記念日だというのに……、

 こんなの、情けなさすぎるっ……!!


「―――でも結局……絶対、私も、忘れられないんだわー……」


 だって、私が初めて“王子様”に出逢った日、でも、あるんだから……。

 私が、初めての恋をした日。
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