Anniversary
哀しいやら嬉しいやら、くすぐったい気分なような、やりきれなさMAXのような……そんなフクザツ極まりない想いを持て余しながら、トホホ…と、そうして苦笑しつつ呟いてうなだれた私に、もう一度、軽くキスを落としてから。
やおら先輩は、「そろそろ行こうか」と、私の頭を優しくポンッと叩いた。
「いい加減、はよ行かんと……碓氷サンの足元、タバコの吸い殻で山が出来るで?」
「…確かに」
そうだ……早く戻らないと、「望遠鏡1つ取りに行くのに一体何時間かかってるんだ!?」的なイヤミを言われることは、間違い無い。
じゃなかったら、「オマエは望遠鏡1つ持ってくることすらマトモに出来ないのか」なパターンね。
――あんなインケン教師に、みすみすイヤミなんて言わせてたまるもんですか……!!
そこで「あれ…?」と、気付いた私は先輩を振り返った。
「そういえば……先輩、どうして部室(ココ)に来たの? 何か忘れ物?」
「いや、その逆。運ぶモノ全部運び終わったから、最後にカギ閉めに来ただけや」
「…てコトは、私で最後?」
「ま、そういうコトやな」
「…………」
くらり…と、思わずそこで軽い眩暈を覚える。
―――あああ、サイテー教師のイヤミ決定ー……。
「もういいよ、先輩……あんな教師、待たせとけば……」
「…つーか桃花チャン? ほかの皆様も待たせてるってコト、忘れてません?」
「―――忘れてませんー……」
天体望遠鏡を抱えた先輩の代わりに私が部室のカギを閉め、私たちは、そのまま一緒に廊下を歩き、校舎の外へと向かった。
昇降口を出ると、途端、真夏の太陽が眩しいくらいに輝いてジリジリと私たちを照り付けてくる。
並んで共に歩き出しながら……眩しさに眇(すが)めた視界の先に映るのは、目の前のロータリーに停まっている1台のバスと、そこに集まる人だかり。