Anniversary
「ホント、わかってないんやからなー桃花は」

 思わず真っ赤になってしまった私を見下ろして、先輩が笑う。とても楽しそうに。

「ち…ちっがうもん! 私がわかってないんじゃなくて、先輩のリアクションがわかりにくいだけじゃんかッ……!!」

 真っ赤になったままで慌てふためきながら反論するも、「いーや!」と、即座に投げかけられるニッコリ笑顔には敵わない。

「どー考えても、ニブいのは桃花やで?」

「ひっど…! そんなニッコリ満面笑顔で、そこまで言うっ……!?」

「だって、ずっと気付かんかったやろ?」

「何っ……」

「オレが、ずっと桃花にこうしたいって…思ってたってコト」

「え……?」

 ――そして再び降ってきた、先輩の優しいキス。


「一生懸命なクセに、どう仕様も無くオコチャマで。――ま、そこが可愛いんやけどな」


 目を開いた私のほっぺたをムニッとつまみながら、そう言って微笑む先輩。

「ホント、目が放せんわー。オマエと居ると飽きんねホンマに」

 頬を摘まんでいた指が、優しく肌の上を滑り……そして唇に辿り着く。――途端、ぼろぼろっと、堪(こら)え切れず、目から涙があふれ出てきてしまった。

「うわっ!? 何や、何で泣くんや!?」

「だ…だってーッ……!!」

(だって、すっごく嬉しいんだもんッ……!!)

 返事を返す代わりに、そのまま先輩の胸の中に飛び込んだ。
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