Anniversary
 先輩の背中にしがみつくように腕を回して抱き付きながら、私は子供みたいにわんわん泣いた。泣いてしまった。
 ――こりゃ当分“オコチャマ”ってバカにされても仕方ないわ…っていうくらいに。

「うわーん!! 私、先輩のこと好きでいてホントに良かったよーッ!! ありがと先輩ー!! もう、ちょー大好きーッッ!!」

「ああ、ハイハイ、そうかい。なら、オレの胸の中でいくらでも泣きー」

 そんな呆れたような言葉と共に、私の肩をその温かい両腕がふうわりと包んでくれる。

「先輩、もう『今のはウソや~ん』とか、言っちゃヤダからねー!?」

「言うかい、んなこと! ――まったく、桃花の中でオレはそこまでウソツキかい……」

「ちっがうもん! だって、そもそも先輩の日頃の行いが悪いからなんだもん!」

「何やソレは? オレほど日頃から桃花のことを考えてるヤツはいないってゆーのに……」

「ウソだー!! 日頃から『桃花で“遊んでる”』の、間違いでしょー!?」

 そんな私の涙ながらの言い草に、そこで一瞬だけ絶句すると先輩は。

「まったくヒトのこと何やと…」と小さくボヤきつつ、深々としたタメ息を吐いてみせた。

 そして思い出したように、ようやく涙をふきふき顔を上げた私を見下ろす。


「…てゆーか、いつまで桃花はオレのこと『先輩』呼ぶ気や?」
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