Anniversary
「ねえ、先輩……?」
1歩先をゆく先輩の背中に向かって、火照る頬を押さえながら、呟くように私は語りかける。
「やっぱり……もし先輩が『月から来た“宇宙人”だった』って言ったら……やっぱり、驚いちゃうかもしれないよ……」
「は……?」
「だって、それなら満月の晩に、月へ帰ってしまうでしょ? かぐや姫みたいに」
「桃花……?」
「帰ってしまわれるより……一緒に月を眺めていられることの方が、嬉しいもん」
「…………」
「月になんて行っちゃわないで。―――桃花の手の届かないところに、行ってしまわないでね……?」
―――2人だけで観る“十三夜”の月は……一体、どんなカオをしてるんだろう……?
「行かない、よ………桃花のそばに、居るから。ずっと」
―――多分……そう囁いてくれた先輩の笑顔と同じくらい、優しいカオをしているに違いないんだろうな………。