Anniversary

【1.前哨戦】


「…てーワケで、吉原(よしはら)! 体育祭の“応援団長”は、オマエに決まりな?」

「―――はあッ!?」

 何のハナシだそりゃ!? と、全くの〈寝耳に水〉な話に、俺は即座にマヌケな声で訊き返した。

 しかし敵もさるもの、クラスメイトで…体育祭実行委員でもある友人・山田(やまだ)は、俺の肩をポンッと1つ叩き、「じゃ、ガンバレ」と、そのまま去ってゆこうとする。

 ――言い逃げかいッ……!!

 そうはさせるかと、俺はガッシリ、そのままさりげなく去っていこうとするヤツの腕を捕まえてやった。

(なんか今、限りなく不穏な言葉が聞こえたよーな気がするぞ……!?)

 腕を掴まれて面倒くさそうに振り返った山田に、改めて真正面から、俺は訊く。

「オマエ……今、俺に、なんつった……?」

「あん? だから『応援団長はオマエに決まった』と……」

「“応援団長”!? ――…って、ナンだそりゃ!?」

「なんだ吉原、そんなことも知らないのか? “応援団長”といえば、体育祭の花形ポジションじゃないか。チームを束ねる纏め役として重要な役目だから、3年生から選出されることになってるんだよ。応援団員の構成としては、“副団長”として1・2年から1名ずつ、その他“団員”にクラスから男女1名ずつ計6名を選出……」

「そんなこたー言われんでも知ってるわ!!」

「…つーワケで、我等がC組連合からはオマエが立候補」

「してねえよ、『立候補』!!」

「…そうだっけ?」

「『そうだっけ』も何も……HR(ホームルーム)の議題に上った憶えすら、俺には無いぞ……!!?」

「じゃー居なかったんだろ、その時」

「俺は常に無遅刻無欠席だッッ!!」

「…まあいいじゃねーか。細かいことにグタグタ言うなよ。所詮“応援団長”なんて、“花形”だけに実質は“お飾り”ポジションだし。応援合戦の準備だけキッチリやってくれりゃー、後はやることねーからさ」

「あのなあッ……!!」

 ――その『応援合戦の準備』とやらが、最も大変で最もプレッシャーのかかるモノであると、分かってて言ってやがるのかコンチクショウ……!!
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