Anniversary
「それに、もう決まったことだしな」
「だから『決まった』も何も、当の俺が何も聞いてないって言って……!!」
「いま聞いただろ? 体育祭実行委員の俺から直々に?」
「ちょっと待て……!!」
つまり山田、キサマの勝手な1人決めかいッ…!! と、尚も食ってかかろうとした俺を制し。
「とにかく!」と、ふいにビシッと人差し指を俺の鼻先に突きつけて、大真面目くさったカオで…しかもナニゲにそこはかとない凄みとハクリョクを湛えて、山田は告げる。
「この時期、こちとら議題はクソ忙しいほど山積みなんだ! たかが“応援団長”の選出ごときで貴重なHRをツブしてたまるか、っつーの!」
――とうとう開き直りやがったよコイツ……。
「よって、実行委員の俺様の権限でオマエに決定! わかったか吉原! わかったらこれ以上四の五のぬかすな!」
「だから何でワザワザ俺に決めるんだよ、そんなものを!?」
「決まってるだろうが!! オマエがクラスで1番デカイからだ!!」
「…………!!」
「さっきも言ったように、“応援団長”は、実質は単なる“飾り”とは云え、一応はチームの纏め役だからな。下級生を脅し付けて言うこときかせるには、見掛け倒しでも、やっぱ、ある程度のガタイと貫禄がなきゃ話になんねーんだよ」
確かに……俺の身長は190㎝。なまじっかの運動部員よりもガタイが良い自覚はある。常日頃から鍛えてもいるしな。
――とはいえ、このクラスには俺と肩を並べるくらいにガタイの良い男が、少なくとも“3人”は、居るハズなのだが……。
それを思い浮かべたトコロで、“ひょっとしてマサカ…!?”という類の、何となくイヤな悪寒に襲われる。
だが、即座に俺は、それをアタマから打ち消した。
――そんな余計なことを言って、わざわざ〈藪(やぶ)を突ついて蛇を出す〉ことは無い。