小さな約束
風のように走り抜け、相手の手からするりとボールをとると、ゴール下めがけて走りだす。
しかし数人の相手チームの選手が光流の行く手を阻む。
相手チームの選手はみんなでかくて、光流は小さな子供みたいだった。
しかし光流は相手の隙間を器用にすり抜けた。
隣のおじさんがカウントダウンを始める。
「5、4、3…」
光流は走る。
でもゴールまでたどり着くか…。
「2…1」
たどり着かない…。
負けた…。
きっと体育館中の人がそう確信した時だった。
シュッ
ゴールから遠く離れたところから光流はシュートした。
ピーーーー!!
ガコンッ
ゲームの終わりをつげる笛の音と、光流のシュートが入るのは同時だった。
「入った…」
あぜんとしてつぶやく。
すごい…。
「入った…入った…。
勝ったぞぉぉ!!」
隣のおじさんが両手を上げて喜んだ。
得点は
71-70
まるでドラマのようだ。
ワァァァァァァ!!!
観客からの声援がうずをまく。
光流はチームの子と抱き合っていた。
「優勝だよ!!ついに優勝だ!!」
俺は隣のおじさんに抱きしめられ、固まった。
さりげなくふりほどき、光流を眺めた。
チームの子や相手チームの子はみんな泣いていたのに、光流は泣いていなかった。
そんな光流を黙って見守る。