小さな約束
「あ…星花堂のエクレアだぁ…!!」
星花堂のエクレアはあたしの大好物だった。
「そうよ。光流これ大好きだったなんてお母さん知らなかったの。
星花堂でケーキでも買って、持って行こうと思ったら芽依が『お姉ちゃんはエクレア大好きだよ』って言うからお母さんびっくりしちゃった」
お母さんはにっこり笑った。
「本当は二人共とても仲良しのはずよ。だってお母さんの知らないことも知ってるもの。
だから仲直りしなさい。
いやなムードで食べるのだけは勘弁よ」
お母さんはハッキリと言った。
「………わかった。
あたしこのエクレア大好きだけど、芽依には言ったことないよ。
知ってたなんてびっくり。
すごく嬉しいよ」
向かいのベットの上で、葉奈と健一が安心した顔でにっこりと笑った。
『よかったね』
葉奈は口パクでしゃべった。
『心配してくれてありがと』
なぜ口パクなのかわからないが、あたしも口パクで返事をした。
葉奈がウインクをした瞬間、かわいらしい声が病室に響いた。