小さな約束
「お前らむかつく!!」
泉くんは突然叫んだ。
あの泉くんが怒鳴るなんて、驚いた。
そしてその言葉の半分はあたしに向けられたものだった。
嬉しかった。
でも、あたしの心はどんな言葉をかけられても健ちゃんのもの。
それだけは変わらなかった。
★・-・◇・-・★・-・◇・-・★
それから何日が経っただろう。
あたしはずっとベットにこもりきりだった。
そして今日も一人で健ちゃんの写真を見つめていた。
シャッ
いきなりずっと閉められたままだったカーテンが開いた。
「葉奈ちゃん??」
「あっ…!はい…」
そこにいたのは、健ちゃんの両親だった。
「久しぶり…葉奈ちゃん」
ピアノの先生の健ちゃんのお母さんは、相変わらずきれいだったが、少しやせたように思えた。
「おばさん、おじさん…お久しぶりです…」
あたしは健ちゃんの写真を机に置いた。
「あら懐かしいわ。これは確か去年のクリスマスパーティーのよね」
おばさんは静かに微笑んだ。
「お前」
おじさんはおばさんの肩に手を置いた。
「あっああ。今日は葉奈ちゃんに用があってきたの」
「用??」
「ええ。あなたに渡したいものがあるの」
何だろう…。
期待と不安を持った目で、かばんを探るおばさんの手を見つめた。