小さな約束


今日の昼間、葉奈が大泣きしていた。


理由はわからなかったが、涙をたくさんためた目は、しっかりと前を向く、確かなものだった。


その日俺は安心して眠りについた。




〜☆〜★〜☆〜★〜☆〜




気がつくとそこは一面の花畑だった。




見渡す限り花、花、花。




たくさんの種類の花が咲き、とても美しかった。




そこで俺は考えた。


――ここはどこだろう…。


一本花を摘み取り、そっとにおいをかぐ。


――においがしない…。


ふと空を見上げた。


そこには小さな子の落書きのような雲が一つ浮かんでいた。




――あぁそうか。これは夢だ。




俺はその場に寝転がった。




――なんか不思議な夢だなぁ…。




子供の落書きのような鳥が、俺の頭上をふらふらと飛んでいった。




――竜太…。竜太…!!




――え…??




どこかで俺を呼ぶ声が聞こえた。


俺はゆっくりと頭を起こし、周りを見渡した。




――えっ…!?




一面の花畑の向こうで健一が手を振っていた。




しかし健一はすぐ踵を返し、走っていってしまった。




――健一っ!!




俺はすぐに健一を追いかけた。


しかし健一との差は広がる一方だった。




――おいっ健一!!待てよ!!




俺は息を切らしながら叫んだ。
< 80 / 112 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop