小さな約束
すると健一はびたりと動きを止め、こっちを振り向いた。
健一はどこか懐かしい柔らかな笑みを浮かべていた。
――健一っ!!
健一は動いていないのに、どんどん離れていく。
――待てよっ!!
俺は必死に手を伸ばした。
健一は目を細めて小さく唇を動かした。
――竜太、君はこっちに来ちゃいけない。
――え…??
――竜太が向かうべき所はここじゃない。
さぁ前を向いて。
70年、80年後にまた来てよ。
――どういうことだよっ!?
――竜太、葉奈を頼んだ。
あと光流も大事にしろよ。
――健一っ!!
健一は消えかかっていた。
――竜太今までありがとう。
すっげえ楽しかった!!
健一が最後に見せた笑みは、とても満足げで輝いていた。
…………。
うっすらと目を開けると、いつもと何も変わらない冷たげな白い天井があった。
「なんだったんだ…??」
一面の花畑を思い出しながらぼんやりと考える。
「おはよ!ねぇあたし健一の夢みた!!」
「え…俺も。お前なんて言われた??」
「え?『ありがとう』って…」
「あたしもみたよ」
「「葉奈!」」