小さな約束


なんだか楽しかった。


みんなで悪いことして、怖い婦長から逃げて。


こんなハラハラドキドキは人生で初めてだった。




ずっとみんなと一緒に走り続けていたかった。




しかし喘息持ちの俺と葉奈は、前を走る二人から徐々に離されていった。




ハッハッハッ




苦しい…。


横を見ると葉奈もつらそうだった。




男のくせに情けないと思いながら、俺は足を止めた。




「竜太!大丈夫!?」




前を行く光流が立ち止まる俺達に気づき、走りよる。




「あたし達は…もうだめ…先に逃げて」




息を弾ませて葉奈は答えた。




「こらぁ!待ちなさい!!」


婦長と警備員が走ってくる。


婦長の形相に一瞬恐怖を感じた。




「ほら、お
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