恋想戯曲 ♥ Le rêve du papillon
そう返事はするけど、パンク修理の手は止まらないままだ。

今はタイヤの中から引っ張り出したチューブを、水の入ったバケツの中に入れているところ。水の中でチューブを握ってブクブクと泡の出てきたところがパンクした箇所ってことだ。前に自転車屋さんで修理してもらったとき、お店のヒトに教えてもらった。

「それにしても、まだ配達の途中なんじゃないの? こんなとこでこんなことしてていいワケ?」

「もちろんよくねぇ。だからパンク修理もサクラ退治もソッコー片付けて仕事に戻るさ」

心配しただけ損だった。さすがに慣れた手つきだから修理のことはコイツに任せて、あたしはカットくんにメールすることにした。
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